営業職を中心に、社員一人ひとりのスキルやパワーがとりわけ重要な不動産業では人材の求人採用活動が経営上の鍵になってくるのはいうまでもありません。しかし、いざ求人活動するとなると、満足のいく人材をなかなか採用できないのも実際です。
一方、IT時代を背景にここ十数年で人材の求人採用手法は多様化の一途を辿ってきました。人材を求人採用する方法は多岐に渡ります。同じ求人採用活動といっても、企業ごと、タイミングごとに、欲しい人材像というのは変わってくるもの。今はどういった人材を求人したいのか、そのためにはどんな求人採用手法がふさわしいのか。そういった点も踏まえ、昨今の採用手法のバリエーションについてお伝えしていけたらと思います。
採用手法の種類
2000年以前は、学校の求人掲示板、ハローワークでの求人、新聞の求人欄、オリコミや求人誌への掲載などで求職者側から応募をしてもらうという形が主流でしたが、IT化が進む中で、求人採用の現場も双方向化が進みました。求人採用の原点である求人募集媒体から近年発達した手法まで何が不動産業での求人募集にふさわしいのか見ていきましょう。
ハローワークでの求人募集
求人募集をするとなったらまず取り組みたいのがハローワークでの求人募集です。各自治体の労働局が運営する公共の職業安定所であるハローワークはホームページに求人募集の情報を無料で掲載できるようになっています。
ハローワークを利用する最大のメリットは、どれだけ長期間、求人募集を掲載しても、人材が採用できても、一切コストがかからないことで、公共ならではの強みです。その反面、民間求人サービスのような行き届いたフォローがあるわけではなく、求人票の作成は自社でやる必要があるという点、人材のマッチング機能が備わっていないため、条件の合う人材へのアプローチが難しい点などに不足感を覚えるケースもあるようです。
ハローワークのみを活用して人材を探すのではなく、他の求人手段と並行して利用するのが良いかもしれません。
民間の求人媒体での求人募集
ハローワークと同じく、前世紀から続く最もオーソドックスな求人募集方法です。
昔から多くの不動産企業が利用してきた手法であるため、馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
インターネットが普及する前は紙媒体のみでしたが、今はweb媒体がメインとなっています。
Webの求人募集媒体
代表的なところでは、リクナビ、マイナビ、デューダ、enなどが挙げられます。料金は、一定期間、募集情報を掲載することで発生する掲載料方式が一般的ですが、後述する成果報酬型の媒体も存在します。掲載課金方式の場合は、掲載情報量の多さや媒体内での露出多寡によって料金が変わります。
利用するメリットは、費用がかかるとはいえ、後述の派遣や成功報酬型の採用手法に比べると採用費が低く抑えられるところです。一方、デメリットは、求人情報掲載そのものに費用がかかっているため、仮に応募が一件もなかったとしても、費用が掛け捨てになってしまうという点です。特に不動産営業の募集は求職者の応募ハードルが高く、掲載料を払っても応募を確保できないということ考えられますし、実際にそういう苦い思いをしている企業様も多いのではないでしょうか。
紙の求人募集媒体
Webでの求人募集が主流ではありますが、新聞のオリコミチラシ、タウンワークなどの街角のフリーペーパーなど一部の紙媒体は今でも健在です。
紙媒体を使うメリットとしては、インターネット検索では漏れてしまう潜在層へのアプローチができる点です。デメリットとしては、その紙面を手に取る人にしか情報が届かないという点が挙げられますが、逆にWeb検索から軽い気持ちで応募する求職者を回避することができるという意味ではメリットとも言えます。
なお、誌面がメインですが、Webやスマホから応募ができる補足的なWebページに情報を載せることも可能です。
成功報酬型の求人募集媒体
一部のWeb求人募集媒体では、掲載課金型ではなく、成功報酬課金型を採用しています。成功報酬課金型とは、求人募集掲載自体は無料で、求職者からの応募がきたとき、採用したときに初めて料金を支払うの課金方式です。
メリットは、実際に応募者、採用者が発生するまで、一切コストがかからない点ですが、デメリットは、成果報酬額が高いという点です。高い採用条件を満たす人を一人または数人だけじっくり探したいという場合は成功報酬型、採用条件を低く設定し大量採用していきたいという場合には掲載課金型を選ぶなど、使い分けながら利用すると良いでしょう。
求人媒体以外での求人採用方法
このパートでは、ハローワークや求人媒体での求人応募受付だけでない近年普及してきた多様な採用方法を紹介していきたいと思います。
ダイレクトリクルーティング
求人媒体から応募を受け取るという待ちの姿勢ではなく、求職者登録している人材に企業側から直接スカウトメールなどを送り、アプローチする手法です。リクナビやマイナビなどの求人媒体に付随機能として付いているケースがほとんどです。
待ちの姿勢ではないので、積極的に採用活動を進めることができるという点がメリットですが、そこまで求職を考えていない登録者も多いため、メール送信の手間を考えると効率の悪さも否定できません。大量採用をしたい、攻めの採用をしていきたいという場合に利用すると良いサービスです。
派遣
求人媒体による求人採用と同レベル、もしくはそれ以上に活用されている人材活用の手法です。人材を自社では採用せず、派遣会社の所属のまま仕事をしてもらうという仕組みが派遣採用です。正社員のように自社で雇用しているわけではないため、契約期間ごとにスタッフの数を減らしたり、増やしたりなど、人員の調整がしやすいのが派遣を利用する大きなメリットです。
一方で、派遣会社に中間料金を支払うので短期的にはコストが割高になる点、スタッフの会社への所属意識が希薄になりがちな点などのデメリットもあります。
なお、近年の法改正で、3年以上、同一の派遣スタッフを常勤として雇った場合は、自社の社員として採用する必要が生まれたため、3年以内で派遣人員を入れ替えるような企業側の動きも見られるようになってきました。派遣は、限られた期間のプロジェクトに人員を充てていきたいというケースの場合に活用するのが最も効果的な利用方法ではないでしょうか。
なお、派遣には紹介予定派遣と呼ばれる、のちに正社員化することを前提とした派遣スタッフの提供サービスもあります。こちらのサービスは採用面接よりも実際に働いてもらうことで会社と人材の相性を確かめていくことができ、効果的な採用手法と言えます。
人材紹介
人材紹介とは、仕事を探している求職者と採用をしたい企業の仲介をするサービスです。求めている条件を伝えれば、紹介会社の方で候補をピックアップしてくれるので、求職者にとっては仕事を探す手間、企業にとっては人材を選抜する手間を大幅に削減することができます。
人材紹介を使う上でのデメリットは、費用が割高なところです。料金は紹介人材の年収の30%程度が相場です。成功報酬制度のため、実際に採用者が決まるまでは料金はかかりません。成功報酬型の求人媒体と同様、大量採用には向かず、一本釣りでスペックの高い専門人材を採用たいというようなときに利用するのが合っているでしょう。
就転職フェア
就転職フェアは、複数の企業がブース出展する会場で求職者と対話する場を作るサービスです。人事担当者と求職者が直接、会話ができることにより相互理解を深められるというのが就転職フェアの一番の特徴です。一般の人がイメージしにくい企業や、悪い評判の立ちやすい業種の企業などは、フェアで求職者と接点を持つことにより、印象の改善や自社への興味喚起につなげることもできるでしょう。
出展費は1フェア、30万円〜100万円程度。業界別、地域別、女性向けなど様々な切り口で開催されるため、参加するフェアによってそれまでとは違う層の求職者に出会うことができる可能性があります。求人募集してもなかなか応募者が増えない、今までの採用活動がうまく機能していないと感じている企業様は、一度試してみる必要のある採用方法のように思います。
リファラル採用
リファラル採用とは、自社の社員に知人を紹介してもらうという採用手法です。現在、自社でしっかりと働いてくれている人の知人、友人であれば、基本的にその人と同じようなタイプ、スペックである可能性が高く、人材の質が担保しやすい採用手法と言えます。さらに、紹介で入社することで紹介者同士の責任も生まれるため、早期退職の発生が少ないという点も大きなメリットです。
一人ひとりの紹介であるため大量採用には向かない、万が一採用した人材が能力不足、勤務態度に問題などの不具合があった場合に紹介してくれた社員がストレスにさらされるというデメリットもありえます。
ソーシャルリクルーティング
FacebookやTwitter等のSNSを通じて企業情報を発信し、その活動を通して採用を行っていく手法です。
SNSの最大の特徴は情報の拡散性にあります。顕在的な求職者だけではなく、それ以外の人にも情報が届きます。
例えば、転職を考えていなかったが、他の人がシェアしたSNSでの採用情報に魅力を感じて求人応募するケースなども考えられます。
仮に採用に結びつかない案件でも企業メッセージとして消費者の興味関心にもつ投げられるケースもあり、ブランディング効果も見込めます。
デメリットは日々の更新に労力がかかる点でしょう。ある程度、専属の人員を配置する必要があります。
まとめ
どういうタイミングでどのような人材を採用したいのか、それによって効果的な採用手法は異なります。同じ方法で求人採用活動を続けてもうまくいかないと感じたら、他のやり方を模索するのが良いでしょう。人材の質によってパフォーマンスの変わる不動産業界、求人採用では視野を広く考えていく必要があるように思います。