新型コロナウィルスの感染拡大により、非対面でおこなえる「IT重説」が重要視されている今日この頃。今回は「IT重説のメリット・デメリット」についてご紹介します。
IT重説とは?
IT重説は「IT重要事項説明」の略語で、パソコンやスマートフォン、タブレット等のITを活用した重要事項説明のことを指します。これまでは契約をおこなう前に対面して読み合せをする必要がありましたが、賃貸取引に関しては2015年8月〜2017年1月の国土交通省による社会実験を経て、2017年10月から本格的にIT重説が実用化されました。また売買取引に関しては、2019年10月より社会実験がおこなわれ、2021年4月に本格運用が始まりました。
そもそも「重説」とは何なのか?
「重説」とは「重要事項説明」の略語で、「売買・貸借・委託などの不動産契約にあたり、契約者が不動産の質や機能、契約上のルールに関する大切なポイントについて説明を受けること」を表します。簡単に言うと、契約前に「あなたが借りる・買う予定の不動産は、このような状態です。本当に借りますか?買いますか?」と不動産会社が契約者に説明することが「重要事項説明」で、この内容を踏まえた上で、契約者が「はい」と答えた場合にのみ契約を取り交わす…という流れになります。
また、重要事項説明をおこなう事は法律で決まっているので、契約者は契約の締結前に宅地建物取引業者から必ず説明を受ける必要があります。
IT重説のメリット・デメリットについて
IT重説には、顧客・不動産会社の双方にメリット・デメリットがあるので、今からご紹介する以下の点について確認しておきましょう。
IT重説のメリット
①「時間」「費用」のコスト削減
顧客は重要事項説明を受けるために不動産会社などに出向く必要がないため、遠方の方や病気やケガ、高齢などの理由で外出しにくい方でも、代理人を立てずに不動産の契約(賃貸・売買)がしやすくなります。
②日程調整がしやすい
IT重説を活用すれば、移動時間や外出準備の時間がなくなるため、忙しい顧客とも日程を合わせやすくなります。また、長時間家を空けるのが難しい方でも、自宅で重要事項説明を受けることができれば日程調整の負担が少なくなります。IT重説の活用でスケジュールにも余裕が生まれるため、そのぶん不動産選びに時間を費やすことが可能になるのもメリットです。
③顧客が事前に準備できる
事前に重要事項説明書等の資料を郵送するため、顧客があらかじめ資料を確認でき、予備知識がつけられるため、質問の準備をすることができます。顧客のなかには、緊張で説明を十分に聞き取れなかったり、疑問があっても質問できなかったりする事例もあるため、顧客の事前準備期間は後々のトラブルを防止するためにも重要だと言えます。
④重要事項説明のデータ保存(録画)によるトラブル防止
IT重説をおこなう際に使用するツールには、画像や音声データを記録できるツールもあります。顧客の同意を得てデータを保存(録画)しておくと、トラブルを解決するための手段として活用できる事もあります。また、顧客が契約後に改めて重要事項説明の内容を確認したい場合は、不動産・賃貸仲介会社に保存(録画)データの提供を求めることもできるため、公平性も高めることができます。
IT重説のデメリットについて
①ITツール導入に手間がかかる
IT重説では、パソコンやタブレット端末などのIT機器を利用できることが前提です。そのため、ITツールを所持していない場合は、ツール導入にコストや手間がかかってきます。ですが、現在はIT通信機器やインターネット環境が広く普及しているため、ITツールの導入自体が大きなハードルになる…ということはほぼ無いと思われます。
②通信環境が悪いと実施できない
IT重説はインターネット環境に大きく依存するシステムなので、通信環境が悪いと機能しないのが懸念点としてあります。山間部や混線しているビルなどの環境では、インターネット通信が不安定になる状況も考えらます。しかし、国土交通省によるIT重要事項説明の社会実験では、通信障害による大きなトラブルは出ていないため、それほど心配しなくても大丈夫だと思います。
③研修や社内マニュアルの構築が必要
IT重説は、対面の場合と比較すると会話のテンポがつかみにくい傾向があります。顧客への伝え方や意思疎通のHow toを事前研修する必要があります。また、IT重説をおこなうためのフローや通信トラブル時の対応など、社内マニュアルの作成も必須です。
まとめ
IT重説は、新型コロナウイルスの感染拡大によって急速に需要を高めていますが、IT重説の利用のしやすさや移動のコストが削減できることから、今後も顧客ニーズが高くなることが予測できます。ITに慣れていない不動産関連の方も多いと思いますが、IT重説が当たり前になる時代が必ず来ると思いますので、これからは変化に貪欲に取り組んでいくことをお勧めします。